【学年成人委員会より】SNSトラブル講座を終えて

「この講演タイトル、きらいなんですよね」
そんな言葉から講演がはじまりました。

講師は大西久雄先生。
吉川市のICT教育指導支援員として、市内各小中学校で子ども達や先生方と接している方です。

大西先生が「きらい」とおっしゃった今回の講演タイトルは"SNSトラブルから子どもを守るために"。

「こどもを守る、って誰が?大人が?大人は大丈夫なの?」

大人がルールを作る。規制する。制限をつくる。
こどもにルールを作らせる。とりあえず行動した、作った満足感はある。
それをみんなが守る?従う?効果はあるのか?

世の中には、トラブルや事故防止のための安全教育が様々あります。
交通事故の怖さをこども達に伝えるためにスタントマンを使って事故を再現する安全教育もその一つ。
しかし、恐怖でコントロールすることは効果がなく、デメリットが大きいという結果が欧米の研究で出ているそうです。

また、1991年にキラウェア火山を訪れた時の写真を映し出し
「日本と違って柵がない。歩いて溶岩に触れるところまで行ける。自己責任が徹底されている」
「柵があったら安全という見方もあるが、では、その柵はどこまで作ればいい?日々風景が変わる火山に対応していてはキリがない」
「柵は観光客の安全のため?管理者が責任を問われないためのもの」
と述べられた後に

事故再現のように恐怖でコントロールするのではなく、
何かあったらどうしよう…の柵を延々整備していくのでもなく。

「してはいけないこと」の集積で禁止や規制を増やしていくことは、これから先の予測不能な社会を生きていく力がつかない。

嫌でも進んでいくデジタル社会、予測困難な社会を生きていく子ども達のために
デジタルテクノロジーを使い、学習し、想像し、責任を持って社会参加する能力…デジタルシティズンシップ教育が必要だというお話でした。

これだけ聞くと「眠くなっちゃいそう…」と思われるかもしれませんが、
講座序盤に"kafoot!"という〇択クイズ作成&参加プラットフォームでのICTクイズにはじまり、
Googleフォームを活用したリアルタイム質問&集計、
要点を絞ったパワーポイントにショート動画を流すなど
とてもテンポの良い講座で最後まで興味深く参加させてもらいました。

デジタル / シティズンシップ=市民権 /教育 は
・知識、スキル…情報収集、ICTリテラシー
・思考力、想像力、想像力…考えを広げてより良い選択をする
・実行力…自分で選択したことを具体的に実行する
この柱で成り立ちます。

デジタルシティズンシップ教育の考え方の下、大西先生は児童生徒に向けて"SNSあるある"を例に挙げた授業をされているそうです。

SNSあるある例「クラスLINEがある。全員参加な雰囲気。連スタとかウザ絡みとかする人もいる。いやだな、グループLINEどうしよう」
この状況にいるとして、どうする?という授業です。

大人が「そんなの抜けちゃいな」「黙ってスルーしとけば」等のアドバイスをすることは簡単ですが、

授業の中では
・どんな感情を持った?
・その感情を持った原因は?
・どんな対応ができそう?いくつでも
・それらの対応にはどんなメリットとデメリットがある?
・メリットデメリットを踏まえ、自分はどうしたい?場にとってどんな行動が善いと思う?
これらをひとつひとつ想像しながら子ども達に考え、書いていってもらうそうです。

今の時点で大人がベターと思う行動を教えるのではなく、
自分で内省し、原因を探し、方法を模索し、決定し、行動する。

唯一の正解を探すことが目的ではなく、それぞれの選択を導き出すことが目的の授業でした。

この繰り返しでデジタル技術を活用しながら主体性、自己決定性を持った子どもを育てませんか?
たまにの授業や講座聴講で身につくものではありません。
授業だけではなく、家庭や地域社会でこのような場作りが必要です。

デジタル社会の技術進歩は止まりません。
大人も一緒に「調べ」「考え」「実行する」、
まず身近なものを話題に上げることから保護者の方も行動してみてください。

そんなメッセージで講演は終了しました。

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講演の前に、吉川中学校 生徒保健委員会 委員長が
「児童生徒のスマホ等 利用状況調査」について発表してくれました。

アンケート調査の分析、そして発表とおつかれさまでした!

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2022/11/10(木)15:00-16:30
吉川中学校区 合同学校保健委員会
"SNSトラブルから子どもを守るために"

参加校
美南小学校、中曽根小学校、吉川中学校

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・大西久雄先生 関連記事
吉川市での取り組み
https://toyokeizai.net/articles/-/625306

「生徒が先生をディスる道徳授業」ネット炎上疑似体験
https://toyokeizai.net/articles/-/226952

・kafoot!
https://kahoot.it/
どなたでも利用できます

・JMOOC
無料で学べるオンライン大学講座
https://www.jmooc.jp/

・OECD教育2030
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/142/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2019/01/28/1412759_2.pdf

・講演の中で紹介された書籍
2040教育のミライ /礒津政明